吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』という長編児童小説を、一日で読破しました。
実際に読んでみた感想・書評を、書きたいと思います。
- 『君たちはどう生きるか』とは何?
- どんな小説?あらすじは?
- 面白いか、つまらないか
- 気持ち悪いなど賛否両論ある理由は?
上記のようなポイントを、ブログ記事にまとめました。
個人的な感想の結論を言ってしまうと、
「道徳的で説教臭く、ちょっと古臭い感じがするのに、一気に読んでしまう面白さもあった」という感じ。
100万部を超えるベストセラーになった漫画版は読んでないけど、宮崎駿のジブリ映画にはついつい期待してしまう筆者が、感想を書いていきます。
君たちはどう生きるかを読んだ感想・書評
小説版の『君たちはどう生きるか』を一気読みしました。
冒頭でも紹介しましたが、感想を簡単にまとめると、
「道徳観が強くて説教臭いのが気になるけど、なぜか一気に読み終わってしまう面白さもあった」という感じ。
数百ページに渡る長編小説でしたが、半日かけて、一気に読み終わってしまったんです。
ストーリーは割と平凡。
面白いとも、つまらないとも分類できないのですが、引き込まれる「何か」があります。
大人が子供に対して、「道徳・倫理」を説くような形式になっているにもかかわらず、読後感も悪くないのが不思議です。
自分が書評するなんて恐縮ですが、
児童書でありながら大人が読んでも共感できるあたりが、吉野源三郎さんの力量の高さなのだと思いました。
【ベストセラー】君たちはどう生きるか、とは何?
君たちはどう生きるか、とはどんな作品でしょうか?
そもそもは、1937年(昭和12年)に初版された長編小説。
児童文学者や雑誌編集長として活躍していた吉野源三郎さんが発行しました。
「あとがき」では、本書は少年少女に「倫理」を考えてもらい、人としてどのように生きていくべきかの道しるべになるような本だと位置づけられています。
その後、2017年に羽賀翔一・マガジンハウスによって、漫画化。
コミック版の『君たちはどう生きるか』は、メディアが取り上げたことで大ヒット。
100万部を超えるベストセラーとなっています。
ちなみに、原作が書かれた当時は満州事変や国連脱退など、軍国主義で戦争に進んでいくような時代背景もありました。
エリート層・インテリ層と呼ばれる人たちに、同調圧力による戦争ではなく、自分の力で考えて人間として正しく生きてほしい、というメッセージ性も感じます。
【あらすじ】どんな内容・ストーリーなのか?
『君たちはどう生きるか』の、あらすじ・ストーリーを紹介します。
主人公は、本田潤一君、15歳。
中学生ですが、当時で言うところのエリート階級。
▶【コペル君】名前の由来は地動説のコペルニクス【君たちはどう生きるか】
父親は銀行の重役でしたが、早くに死んでしまいます。
優しい母親と、女中(家のお世話係)と一緒に暮らし、近所に住む叔父さん(父親の弟)と家族のような関係性です。
叔父さんは、亡き兄から「潤一には立派な人間になってほしい」と頼まれており、日記のような、手紙のようなノートを綴ります。
全体のストーリーは、
主人公と友人たちの交流→叔父さんのノート
という形式で進んでいきます。
貧困家庭の浦川君に対する、クラスメートのいじめ問題。
それに立ち向かう正義感の強い北見君。
小学生のことから仲良しな水谷君。
主人公自身は、学業優秀、スポーツもよくできて、そこそこ人気者だが、お調子者でふざけるのも好きなので、級長にはなれないような人柄。
そんな4人+(水谷君のお姉さん)が中心になって、話が進んでいきます。
クライマックスのシーンだけ書きます。
仲良し4人組は、北見君が上級生から呼び出しを受けて暴力を振るわれるという噂を耳にします。
その時は、みんなで北見君の前に立ちはだかってやろう、そうすればむやみに殴れまい、と約束をします。
しかし、いざ、北見君が上級生に殴られるとき、
主人公のコペル君は、見て見ぬふりをして親友を裏切ってしまうのです。
出ていこうと思うのに、どうしても身体が動かず、
水谷君と浦川君は北見君を守ろうと、身体を張っているのに、主人公だけは蚊帳の外に置かれてしまいます。
あまりにも卑怯な自分の行いに心を病んでしまい、2週間も学校を休みます。
そして叔父さんに、自分の裏切り行為を告白するのです。
叔父さんは、潤一君の素直な気持ちを伝えるべきだ。
手紙を書いて、正々堂々と謝るのはどうか、とアドバイスします。
コペル君は北見君に手紙を書き、そして親友3人と仲直りを果たすのです。
…いかがでしょうか?
ハッキリ言って、あらすじだけを読むと、よくある学園モノというか、いじめ問題とか友人との約束とか、アリがちです。
でも、途中途中で語られる、叔父さんの倫理的言説や、母親の優しい言葉や、友人たちとの当時の遊びなどが、ちょっと内容を膨らましてくれます。
例えば、
- 天文学者コペルニクスのこと
- 中学生は何も生産していないが、豆腐屋は生産している
- 野球の早慶戦を想像しながら実況するだけの遊び
- 英雄ナポレオンの功績と罪
などなど。
読み物として、随所に「考えるきっかけ」が与えられており、読みながら考えたり、考えながら読んだりできるような作品になっています。
このあたりが、児童文学でありつつ、倫理書として成立させた吉野氏のすごさなのかと思います。
結局、面白いの?つまらないの?
結局、面白いです。
少なくとも、一気に読み終わってしまうほどの「引き込まれ感」はあります。
ただし、物語(ストーリー)は、つまらないです。笑
いじめや貧困や暴力や裏切りなど、クラスメートとの関わり合いの中で、コペル君が人間的に成長していく物語ですからね。
冒険にも出ないし、魔法も使わないし、恐ろしい敵も現れません。
児童文学としては、ストーリーがつまらないと言われても仕方ない。
でも、明らかに道徳の教科書よりは面白い。
(※道徳では、忠臣蔵を「良い話」としているくらいですからね…)
- 世界の中で、自分はひとつの分子に過ぎない
- 学生は消費ばかり。立派に生産する人間になりたい
- 世の中の常識を疑い、疑問を持つことが大事
- 卑怯者の自分を見つめ、素直に謝罪する勇気
上記のような、人間の内面的な成長が描かれています。
主人公コペル君を通して、大人の自分も考えさせられます。
ここまで堂々と、真正面から道徳観・倫理観を語る小説は、ありません。
そういう意味合いで、傑作と呼ばれるのではないでしょうか。
池上彰さんも、かなりおすすめしています。
(私は池上さん、嫌いですが…;)
【口コミ・評判】君たちはどう生きるかは賛否両論
『君たちはどう生きるか』を読んだ人たちの感想・口コミ・評判をまとめます。
ハッキリ言って、賛否両論、かなり分かれています。
- 『星の王子さま』の日本語版
- 人に優しく、自分に厳しく生きようと思った
- 社会人が忘れがちなピュアな心を思い出せた
- 感動的なストーリー
- 自分の行為への激しい後悔と、真の友情
- クソつまらない
- なぜコペル君のようなダメ人間が許されるのか
- ストーリーに違和感がある
- 説教臭くてムリ
- 叔父さんが上から目線。そもそも誰だよ
- 昭和的な道徳観を押し付けられる感じ
- 登場人物がみんな気持ち悪い
う~む、気持ち悪いとか、ムリとか…
割と辛辣な感想を持つ読者もいたようです。
気持ちは、分からなくもない。
昭和的な、戦前的な、ちょっと古臭い価値観だということを差し引いても、まっすぐで正論的なモラルが表現されているので、戸惑う人もいますよね。
しかし、それでも私はこの作品を評価しています。
うさんくさいモラルを、真正面から捉えて、自分でも考えてみることって、大事ですよね。
この作品を、コペル君を、クズと呼ぶのは簡単。
でも、コペル君のように本当に自分の行いを猛省して、気を病むほどに悩むことってありますか?
悩むことは、弱さではなく、強さだと感じます。
それにしても、色々な口コミ・書評があって、本当に不思議な魔力を持った作品ですね。
漫画・コミックの評判は賛否両論。気持ち悪い?
『漫画 君たちはどう生きるか』は、100万部を超えるミリオンセラーになってます。
それでも、やはり口コミ・評判は賛否両論。
- 目力がすごい、目力の強さで買った
- 表紙が気持ち悪い
- マンガの絵が嫌い
- なぜベストセラーなのか分からない
- 原作を薄めてしまった
- コペル君の表情が印象に残る
- 山口の兄貴って設定は不要
などなど。
個人的には、漫画版は読む気になりません。
吉野さんの小説で、お腹いっぱいです。
それにしても、「表紙が気持ち悪い」っていう口コミが多いので驚きました。
こんなにキモイって言われて、コペル君、かわいそう。
宮崎駿が『君たちはどう生きるか』をジブリ映画に?
『君たちはどう生きるか』と言えば、世界の宮崎駿が、ジブリ映画にすることで話題に。
最初に聞いたときは、
「え~。ジブリでこんな渋い作品やるの…?」と否定的でした。
(※かなりのジブリ映画のファンです)
しかし、宮崎駿の発言をよく聞いてみると、
『君たちはどう生きるか』のストーリー・原作を再現するわけではないようです!
主人公が『君たちはどう生きるか』という本を大事にしている、という設定。
道徳・倫理について、まっすぐ描かれている本小説を大事にしている主人公って、どんな人物なんでしょうか。
そして、宮崎駿の新作映画、どんなストーリーになるのでしょうか。
『風立ちぬ』で見せたような、渋い大人の世界なのか、
『となりのトトロ』『魔女の宅急便』のように原点回帰した子供向けファンタジーなのか。
映画のタイトルが『君たちはどう生きるか』と言っている以上、
真面目な作品になるのだとは思いますが、逆に言えば、「子供向け」であることも間違いないでしょう。
原作自体は、15歳の少年が主人公ですし、
読者もそのくらいの年代(今で言うと、中学校高学年~高校生)くらいの思春期の人たちに向けて書かれているはず。
宮崎駿の新作ジブリ映画も、もしかしたら、ターゲットの年代が15歳前後になるかもしれませんね。
映画公開は2023年になりそう、だとか?
『君たちはどう生きるか』感想まとめ
今回のブログ記事では、吉野源三郎さんの長編児童小説『君たちはどう生きるか』について、感想・書評を書いてきました。
個人的には、面白い作品だと思います。
ストーリーはつまんないし、道徳性が強すぎて性に合わない人もいるでしょう。
それでも、名作小説であることに変わりはありません。
「子どもに読んでほしい本」「子供に読ませたい本」としてメディアで取り上げられることも多い作品ですが、子どものときに読んでもつまんないと思います。
実は、社会経験を多少積んだ、20代~40代の人が読んでこそ、真価が分かるのではないでしょうか。
もしかしたら、昭和初期の時代の15歳って、現代の15歳よりも大人びていたのかもしれません。
自分が15歳の時、コペル君のような考え方には、到底、たどり着きませんでしたからね。
ただ学校で勉強したり、塾に行ったり、部活を頑張ったり、友達と遊んだり、そんな日常を過ごしていて、人生とか社会とか友人関係とか、真面目に、真剣に向き合って考えたことなんてありませんでした。
宮崎駿の新作ジブリ映画も気になって仕方ありませんが…とりあえず、今回のブログ記事はここまでにしておきます!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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